【袖ケ浦】千葉袖ケ浦パワー火力発電所計画の環境影響評価方法書への意見書を提出しました

袖ケ浦市で計画が再開した「千葉袖ケ浦パワー」の天然ガス火力発電所計画について、東京湾の会では環境影響評価方法書に対して以下の意見書を提出しました。

意見募集の締め切りが8月14日(金)消印有効となっています。

(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画  環境影響評価方法書」への意見書 Word  PDF

昨年1月、千葉袖ケ浦エナジー社が進めてきた石炭火力計画を中止したことに対して、東京湾岸に在住する市民として、その英断に深い敬意を表し、歓迎しました。しかし、この度、再び大規模火力発電所の計画を再度打ち出したことに対して、計画内容に対して環境保全の見地から大変憂慮しております。

以下、本計画に対しての意見を述べます。

1.パリ協定との不整合

気候変動問題は、今本当に深刻な局面を迎えています。地球の平均気温は上昇し、かつてない規模での豪雨や洪水、干ばつや熱波など様々な異常気象が世界各地で発生しています。今後、こうした気候変動のリスクは確実に高まると言われています。

気候変動対策として、世界のほぼすべての国が参加するパリ協定では「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分下回るよう 抑え、また、1.5℃に抑える努力を追求すること」が目標とされています。IPCCのレポートによれば、1.5℃を超えない排出経路として、2030年までに2010年で約45%減少し、2050年前後に正味ゼロに達することが求められています。

本計画は、燃料がLNGで石炭よりはCO2排出係数が低いとはいえ、新たな化石燃料の火力発電所を2028年から稼働するという点でパリ協定に全く整合しません。2030年には、排出量を現状からほぼ半減しなければならないにもかかわらず、袖ヶ浦に200万kWもの火力発電所が稼働すれば、約650万トン近いCO2 を毎年排出することになり、その後も数十年に渡って、排出を固定化することになります。本計画は気候変動対策との不整合というただ一点で見直すべきだと考えますが、御社としてはパリ協定との整合をどのようにとるのでしょうか。

2.2030年・2050年の日本の削減目標との不整合

日本の現在の温室効果ガス削減目標は2030年に2013年度比26%削減とされています。しかし、この目標はパリ協定の目標と整合しないため、国連からはさらに野心的な目標に引き上げるよう求められています。

こうした状況下において、本計画は2028年からの稼働を見込んでおり、2030年の日本の温室効果ガス削減目標の達成すら危うくするものと考えます。また、2050年にかけて、「低炭素化」ではなく「脱炭素化」が目指される中でどう整合をとるのでしょうか。

3.エネルギーシフトの必要性

気候変動対策としては、CO2を排出しない、太陽光・風力などの自然エネルギーを主力電源とすべきであり、化石燃料から自然エネルギーへとエネルギーシフトすること不可欠であり、社会のニーズでもあります。現に、カーボンゼロ宣言をする自治体は、8月6日現在で東京都・京都市・横浜市を始めとする151の自治体(21都道府県、82市、1特別区、37町、10村)が 「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明しています。

東京ガスおよび九州電力に対しては、日本のエネルギー企業として、脱炭素社会の実現に向けて化石燃料から脱却し、日本のエネルギーシフトに貢献するような計画を期待しています。本計画のように大量のCO2を排出するような天然ガス火力発電所はエネルギーシフトに逆行するのではないでしょうか。

4.光化学スモッグなど住民の健康影響

千葉県では、東京湾岸沿いの市原や君津地域における光化学スモッグの発令が、他地域よりも多いことが明らかになっています。LNG火力発電所からは光化学スモッグの原因となる窒素酸化物を排出します。特に幼児や子どもたちへの影響が心配されますが、こうした住民への健康影響調査を行うのでしょうか。。

5.温排水の影響

温暖化による海水温の上昇が心配される中、東京湾においても最近は海水温が以前よりも高まっていることが確認されています。南方系の回遊魚が東京湾で越冬するなど海の環境は激変しています。

環境影響評価においては、今後の温暖化の影響や海水温の上昇するリスクも考慮したうえで、さらに7度温められた排水を東京湾に追加的に排水することがどのような影響をもたらすのかを調査・評価すべきと思いますがいかがでしょうか。

6.PM2.5の健康影響

人の毛細血管よりも粒子が小さいPM2.5は、呼吸器系の深部まで到達しやすく、心血管系、呼吸器疾患による死亡 ・慢性呼吸器疾患の発症および罹患 (喘息、慢性閉塞性肺疾患等) ・慢性的な生理機能変化 ・肺がん ・慢性心血管疾患 ・子宮内発育の制限など、長期健康影響が指摘されています。環境アセスメントにおいても、当該発電所が稼働した場合に排出するPM2.5による人体への健康影響について地域住民に示すべきだと思います。

7.インターネット縦覧に対する意見

環境影響評価方法書のインターネットの公開方法をもっとアクセス可能な方法に切り替えるべきです。現状では、インターネットエクスプローラーでしかPDFを開くことができず、他のブラウザでは見ることができません。唯一見ることができるのは「あらまし」だけです。環境影響評価の手続きの趣旨は、住民に広くこの計画を知らしめ、幅広く意見を募集し、その意見を事業に反映することです。それにも関わらず、縦覧自体に制限をかけて、誰もがアクセスできる状況にしていないことは極めて問題だと思います。

また、この計画については、多くの市民に十分に認知されていません。縦覧期間後も引き続き継続して計画内容がわかるように、すべての環境影響評価図書を公開し続けるべきだと考えます。