【袖ケ浦】千葉袖ケ浦天然ガス発電所の環境アセス準備書に対して意見書を提出しました!

2022年3月1日に千葉袖ケ浦パワー(東京ガスと九州電力の子会社)による(仮称)千葉袖ケ浦天然ガス発電所建設計画 環境影響評価準備書が公表されました。これに対して、石炭火力を考える東京湾の会では、次の意見書を提出いたしました。

意見書の締め切りは4月14日(木)消印有効です。

ぜひ多くの人から意見を出しましょう。

 

石炭火力を考える東京湾の会からの意見書

気候危機が喫緊の課題となり、気温上昇を1.5度に抑えるためには残余カーボンバジェットはわずかであり、火力発電所を新たに建設できる余地はない。天然ガスを燃料に使うといっても、大規模排出源になることに違いはなく、本計画には反対である。以下に詳細の意見を述べる。

① 燃料が天然ガスであることについて

準備書では、「他の化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量が少ない天然ガスを使用することにより二酸化炭素の排出原単位を低減する」とある。
IEAが2021年5月に発表した「Net Zero by 2050」によれば、ネットゼロエネルギーシステムに移行するためのマイルストーンとして、「2030年代に大型の石油火力発電所の段階的廃止」が示される一方、天然ガスに関しては「2030年までに発電量をピークとし、2040年までに90%低下させる」ことが示されている。本計画は、もともと石炭火力だったものを、計画変更して天然ガスを燃料とすることで改めて推進しているが、気候危機への対応として最も重要なのは、太陽光や風力など再生可能エネルギーの割合を大幅に引き上げることが必要であり、たとえ天然ガスであろうと、新規で化石燃料の火力発電所を増やす余地はどこにもない。

② CO2の排出係数について

二酸化炭素の排出原単位を各号機ともに0.307㎏/CO2としているが、IEAが2021年5月に発表した「Net Zero by 2050」では、ネットゼロシナリオとして電力分野のCO2排出係数は、2030年に0.138kg/kWh、2040年には-0.001g/kWhとされている。0.307kg/CO2はそれを大幅に上回り、本計画がパリ協定の1.5℃目標に全く整合しないことは明らかである。

③ CO2の総排出量について

準備書では、二酸化炭素排出量は3基合わせて年間472万トンとしている。これは袖ヶ浦市全体での二酸化炭素排出量234万トン(※)を大幅に上回る非常に大規模な排出で、市民の地球温暖化防止対策の努力を水泡に帰すものである。天然ガスであっても化石燃料であることに違いはなく、省エネ法のベンチマーク指標の達成すればよいとの認識は甘く、企業責任として新たな大規模排出源となる電源を新設すべきではない。これからの電力システムは、化石燃料を燃料とする火力発電所を建設すべきではなく、再生可能エネルギーの導入に集中すべきである。
※出典:イー・コンザル

④ 温排水について

準備書によれば、復水器の冷却水として、低温の下層の海水を取水して、温度差7℃以下で毎秒39.5トンもの水中放水をするとある。気候変動により東京湾の海水温は年々上昇している中、海の生態系も劇的に変わりつつあり、さらにこうした温排水が湾内に追加的に行われることで、海の生態系はさらにダメージが大きくなることが想定される。将来的な温度上昇の予測も考慮した上で海への影響を考えれば、本計画は認められるものではない。

⑤ 環境アセスメントの手続きについて

そもそも袖ヶ浦火力発電所の計画は、2015年に株式会社千葉袖ケ浦エナジーが出光興産株式会社所有地内において、石炭を燃料とする総出力約200万kWの計画として公表されたものである。その後、この計画は方法書を終えた段階で2019年1月に十分な事業性が見込めないとの判断から断念すると発表された。その後、千葉袖ケ浦エナジーから千葉袖ケ浦パワーへ事業が引き継がれて、対象事業の燃料が石炭から天然ガスへと変更され、2020年に方法書が公表されるという経緯がある。当初から現在に至るまで約7年の歳月が過ぎ、気候変動の加速はより深刻化し、IPCC第6次評価報告書のレポートなどが取りまとめられる中、1.5℃目標を世界が目指すこと、そして1.5℃目標の達成まで、残された選択肢はわずかであることが明らかになってきた。石炭から天然ガスへと燃料が変わり、排出係数が低くなったから環境影響が低減されるので、それでよいというレベルではない。今は、化石燃料を使うことそのものが問題であり、脱炭素社会への速やかな移行が求められるという時代にある。それに見合った事業であるかをゼロベースで再考すべきである。