【横須賀】JERA石炭火力発電所の本格的試運転開始に抗議する声明

横須賀火力発電所建設を考える会は、本格的試運転を開始したJERAに対して抗議声明を発表しました。地球温暖化による異常気象が頻発する中、大規模にCO2を排出する火力発電所の運転に断固として反対します。


2022年7月15日
横須賀火力発電所建設を考える会

JERA石炭火力発電所の本格的試運転開始に抗議する声明
~改めて横須賀石炭火力発電所建設中止、稼働断念を求める~

JERAが地元町内会を通じて蒸気排出作業についてのお知らせの回覧を見た市民から当会に対して心配の声が寄せられました。JERAはすでに試運転を始めており、この回覧をもって営業運転に向けた本格的な試運転を開始するものと思われます。

6月6日に横須賀市とJERAは「環境保全協定」なるものを締結しましたが、試運転開始についてはなんの効力もない取り決めであったことが計らずも判明し、営業運転になっても実質的に市民の安全、不安を解消できるか疑われます。

当会は、将来にわたって安定した環境のもとで暮らす権利を守るために、石炭火力発電所の建設中止を求め、建設を認めた国に対する行政訴訟を提起した原告を支援しており、この裁判の係争中に運転を強行する企業姿勢に強い憤りを感じます。そして、大気汚染、気候変動への影響を顧みず、新たな石炭火力発電所を稼働させようとするJERAに対して抗議するとともに、2030年までのできるかぎり早期に石炭火力事業から撤退することを強く求めます。

国際社会はパリ協定、グラスゴー気候合意を受けて、気温上昇を2℃より低い1.5℃に抑える努力が必要との認識に立っています。気候変動対策を進めるうえで、とりわけ石炭火力発電に対する国際認識は、計画が発表された2015年から大きく変化しています。

当会をはじめ、深刻化する気候危機や大気汚染による健康影響を懸念する市民は、石炭火力発電を新たに計画したJERA(計画当時は東京電力)に対して、国際社会における気候危機回避の要請が高まる状況を踏まえ、計画の見直しを求めてきました。しかし、JERAは石炭火力発電所建設を強行しています。地球環境、地域環境を顧みず、環境影響を懸念する市民の声に応じなかったことに対して、怒りを禁じ得ません。

気候危機の回避に必要とされるのは、急速かつ大幅な温室効果ガスの排出削減です。そのためには、温室効果ガスの主要排出源となっている石炭からの脱却が必要とされています。

しかしJERAは石炭火力発電所の建設を止めないばかりか、ゼロエミッション火力と称してアンモニア混焼などで石炭火力の延命をはかろうとしています。本当にCO2を排出しないというのであれば、JERAとして1.5℃目標に整合した電力会社としてのCO2削減のロードマップを示すべきです。実現できないことを「挑戦」と称しての大宣伝はただちに中止すべきです。

さらに、国際社会の動きとして6月開催されたG7サミットでは、気候変動が議論の大きな焦点となり、化石燃料の段階的削減が合意され、日本の脱炭素化への加速が求められています。

今回の合意で重要なことは「排出削減対策がとられていない石炭火力発電を廃止に向けて具体化する」ことに踏み出したことです。

世界の気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標に整合するためには、先進国が2030年までに石炭火力発電を全廃する必要があるとされています。今回のサミットで、G7各国は「パリ協定への揺るぎないコミットメントと、その実施強化」を再確認しており、このコミットメントを実行するために、日本は2030年までに国内の石炭火力発電所をすべて廃止させるという具体的な道筋を設定する必要があります。そのため日本は第6次エネルギー基本計画で、2030年の電源構成を石炭火力19%、LNG火力20%と定めていますが、G7サミットの結果に沿った内容に早急に修正する必要があります。

現在、日本政府はJERAなどとともに石炭火力発電における水素・アンモニアの混焼を推進していますが、国際社会がいう「排出削減対策がとられていない」石炭火力には、水素・アンモニア混焼は含まれないことを認識すべきであり、国際社会と協調してこの合意を果たすためには、石炭・ガス火力発電所を延命させるアンモニア・水素混焼プロジェクトを終了することが必要です。本件石炭火力発電所の問題は、立地地域である横須賀・神奈川の問題にとどまらず、気候危機の回避に向けて歩もうとする国際社会の取り組みに逆行するものとして、悪影響を及ぼしています。

横須賀の石炭火力発電所が営業運転の開始に至ると、年間最大726万tCO2の排出が見込まれます。神奈川県における温室効果ガス排出量(年間)の約10%に相当する膨大な量です。横須賀市も神奈川県もゼロカーボンシティ宣言を発し、脱炭素社会を目指しているが、これにも逆行します。

当会は、今後も地域・地球環境に悪影響を与える石炭火力を2030年までの早期廃止を求め続けます。そして、地球環境を保全のために行動するあらゆる世代の市民、団体と連帯し、エネルギー政策の転換、環境問題の解決に尽力していきます。

以上