【要請】(株)JERAに対してCMの放映中止を求める要請を提出しました

株式会社JERA 代表取締役社長 小野田 聡様
中部電力株式会社 代表取締役社長 林 欣吾様
東京電力株式会社 代表執行役社長 小早川 智明様

2021年5月18日

貴社CMの放映中止を求める要請

拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 今年4月よりTBSテレビ等にて放映されている「ゼロエミッション火力で2050年CO2排出ゼロを目指す」という内容の貴社のCMを拝見しました。これは、昨年10月13日に公表された貴社の「JERAゼロエミッション20501」に合わせたCMであると理解しております。

 この「JERAゼロエミッション2050」における新たなロードマップでは、以下の事項が目標として掲げられています。

・ 石炭火力について、「2030年までに当社の保有するすべての非効率な石炭火力発電所(超臨界以下)を停廃止すること」
・ 火力発電所について、「化石燃料とアンモニアや水素の混焼と、その混焼率を徐々に引き上げていくこと」
・ アンモニア混焼について、2030年までに実証実験を行い2040年代に向けて石炭火力への混焼率20%、2050年に向けて専焼を目指すこと
・ 水素混焼について、2020年代は技術的課題の解決、2030年以降の本格運用を目指すこと

 しかし、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5度特別報告書では全世界で2030年までに温室効果ガス排出量を2010年比45%削減することが求められており、国連もOECD諸国に対し2030年までの脱石炭社会の実現を再三求めています。各国の気候変動政策を調査するシンクタンクのクライメート・アクション・トラッカーによる報告においても、先進国である日本は、2030年までに石炭火力の全廃及び温室効果ガス排出量を2013年比60%以上削減することが求められています。
国際的にも科学的にも2030年までに石炭火力の全廃が求められている中、2030年代においても混焼という形で石炭火力の延命・依存を促進する技術は、パリ協定に整合した発電方法とはいえません。
また、貴社発電所で混焼の燃料となる水素やアンモニアは化石燃料から生成することが想定されています。製造時に排出されたCO2は、炭素回収貯留・利用(CCUS)を利用して処理することが前提とされているため「脱炭素燃料」とされていますが、CCUSは技術的課題が多く残っている他、経済的にも実現可能性が低く、不確実な技術です。
「気候危機は待ったなし」という喫緊の課題を抱える状況下では、省エネルギーの促進、自然エネルギーへの転換という確実な方法での温室効果ガスの削減が求められます。次世代のエネルギー会社を名乗るのであれば、省エネルギーの社会インフラへの転換と地元のニーズに基づく地域分散型の自然エネルギーの普及、変動型の再生可能エネルギーを調整できる電力システムの整備など、小規模分散型の自然エネルギー社会の実現のために尽力すべきです。
国際的にも国内においても気候危機への意識が高まり、市民や企業、自治体が一丸となってパリ協定を目標達成すべく各々の積極的な取り組みが求められている中、貴社のCMのようにパリ協定の目標に整合しない発電技術を国民に向けて発信することは、企業として無責任ではないでしょうか。CMで宣伝されている「発電の常識を変え」ようという将来への挑戦は一見輝かしく見えますが、いま求められていることから目をそらしていると言わざるを得ません。
以上の理由から、現在放映しているCMの放映を中止することを求めます。

敬具

石炭火力を考える東京湾の会一同
横須賀火力発電所建設を考える会一同

 

CO2を大量に排出する石炭火力を横須賀で建設しながら、一般にはこのような広告を発信。