【横須賀】横須賀市の新計画策定にあたっての意見を提出しました

横須賀市が新たな「環境基本計画」及び「地球温暖化対策実行計画」の策定に向けて市民の意見を募集しています。石炭火力を考える東京湾の会として以下の意見書を提出しました。締め切りは10月30日です。ぜひ、気軽に意見を提案していきましょう。

横須賀市 新「環境基本計画」及び「地球温暖化対策実行計画」策定にあたっての意見

横須賀市環境政策部環境企画課
ご担当者様

こんにちは。

この度は2022年度からの新「環境基本計画」及び「地球温暖化対策実行計画」策定にあたっての意見投稿の機会を設けてくださいましてありがとうございます。

石炭火力を考える東京湾の会は、横須賀火力発電所建設を考える会と共に活動している団体として、現在横須賀市で検討されている新しい環境基本計画及び温暖化対策実行計画について、下記の提案をします。

1. 科学に基づく気候変動対策を。計画に「1.5℃目標」を掲げること

2015年に国際的な気候変動対策のための「パリ協定」が採択されました。気候危機を回避するために、気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃の上昇に抑えることを目指しています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による「1.5℃特別報告書」では、世界全体の温室効果ガス排出量を2010年比で2030年に45%削減、2050年に実質ゼロにすることが必要だとしています。

横須賀市の地球温暖化対策計画においても、1.5℃目標を目指すことを明記するとともに、温室効果ガスの排出量を2030年に少なくとも45%削減、2050年に実質ゼロとする目標を明示することを提案します。

2.横須賀市でも「ゼロカーボンシティ(2050年排出ゼロ)」の表明を

上述の通り、1.5℃目標を達成するため、日本では自治体が2050年二酸化炭素排出実質ゼロに取り組むことを表明する「ゼロカーボンシティ宣言」の動きが活発になっています。この宣言は、横須賀市出身の小泉進次郎環境大臣が旗振り役となって進めており、2020年10月26日時点で165自治体が表明し、表明自治体の住民数は日本の人口の過半数を超える883万人になりました(注1)。神奈川県や、神奈川県内の自治体にも、宣言する動きは広がっています。

気候変動による影響は、近年ますます大きくなっています。日本国内においては、今年7月の熊本県集中豪雨は記憶に新しく、昨年の台風19号によって未だ仮設住宅の利用者が1万人以上います。横須賀市でも、既に気候変動の影響による海水温の上昇によって漁業者への影響が出ています(注2)。昨年の台風15号・19号では漁業施設や遊歩道等の物損被害、農業への被害があり、市の予算を復旧に充てています。このまま温暖化が進行した場合、台風などの気象災害の頻度は増え、強度も増すと言われており、自治体の緊急支出も増加する可能性があります。

また、10月26日の臨時国会において、菅首相が2050年ゼロエミッションを宣言しました。横須賀市としても、できるかぎり早期に「ゼロカーボンシティ」をめざすことを宣言し、新しい環境基本計画及び温暖化対策実行計画のなかで具体化していくことを提案します。

3.横須賀石炭火力事業の中止を

現在久里浜で建設が進む横須賀石炭火力発電所の稼働は気候変動を加速させます。横須賀石炭火力発電所は、稼働を開始すれば年間約726万トンものCO2を排出し、これは神奈川県の温室効果ガス排出量の10分の1に相当します。省エネなどの努力で取り組んだCO2削減を全て吹き飛ばしてしまうようなもので、市としても中止を求めるべきです。

また、大気汚染の観点からも、横須賀石炭火力発電所は稼働すべきではありません。今年2月末から猛威を振るう新型コロナウイルスによるパンデミックにおいても、大気汚染の深刻な地域に住む人々の多くが犠牲になりました。石炭火力発電所は、温室効果ガスだけでなく、NOXやSOX、PM2.5などの大気汚染物質も排出します。これらの大気汚染物質は、ぜんそくなどの循環器系疾患の原因にもなります。建設地近くには公園や学校、病院や住宅があり、横須賀石炭火力発電所が稼働した場合、多くの住民の健康に悪影響を与える可能性があります。さらに、PM2.5を中心としたこのような大気汚染物質は、横須賀市内だけでなく、首都圏全体にも拡散されてしまいます。

 

以上、新計画策定においては、横須賀市としてもゼロカーボンシティの実現を目指し、その第一ステップとして、横須賀石炭火力発電所の建設・稼働の中止を目指すことを提案し、脱炭素社会を牽引する自治体となることを期待します。

 

注:

  1. ゼロカーボンシティについてはこちら:www.env.go.jp/policy/zerocarbon.html
  2. 石炭火力を考える東京湾の会のメンバー団体でもあるFoE Japanでは、横須賀市内の漁業者に気候変動の影響の聞き取り調査を行っています。
  3. 2020/2/3 「『自然を元に戻してほしい』横須賀の漁業者を取材して」foejapan.wordpress.com/2020/02/03/akiya/
  4. 2020/9/28「『地球の変化に気付いて』横須賀海苔漁師の声」foejapan.wordpress.com/2020/09/28/hashirimizu/