【報告】神戸石炭訴訟1周年記念シンポジウム、市民宣言を採択!

2019年12月8日、神戸市の私学会館大ホールにて、神戸石炭訴訟提訴1周年記念シンポジウム
「どうする?気候危機への対応 -変わる世界、日本と神戸の課題-」が開催され、100名を超える参加者が集まり大変盛況の中で行われました。

この企画では、神戸の石炭火力発電を考える会の呼びかけに応じ、石炭火力を考える東京湾の会も主催団体として参加し、仙台、神戸に続いて横須賀の石炭火力発電所建設計画に対する行政訴訟の問題を提起しました。シンポジウムの最後に、「石炭火力発電所のない持続可能な社会を目指す仙台・横須賀・神戸からの市民宣言」を読み上げ、参加者一同大きな拍手に包まれ、宣言を採択し、シンポジウムの幕を閉じました。

横須賀の裁判に関する経緯や、横須賀が地元の小泉環境大臣への「期待」を語る鈴木陸郎原告団長

ディスカッションは、仙台の高橋弁護団長、横須賀の鈴木原告団長、神戸の池田弁護団長と廣岡原告団長がそれぞれの地域での実情を訴え、今後の展望を語った

横須賀石炭火力行政訴訟の小島延夫原告団長はインターネット中継で参加した

シンポジウム会場には総勢100名の参加者が集まった

 

石炭火力発電のない持続可能な社会を目指す仙台・横須賀・神戸からの市民宣言
——神戸石炭訴訟提訴1周年記念シンポジウム記念宣言——

 エネルギー利用をめぐる環境問題は、いまや危機的状況にある。2018年・2019年の猛暑や豪雨、台風などを想起すれば、気候変動は潜在的なリスクから現実の危機へと変わったといってよいであろう。石炭火力発電が、現在世代だけでなく将来世代の人権を著しく侵害することは明らかである。私たちはこの問題を一刻も早く解決しなければならない。

2019年12月8日、私たちは神戸に集い、日本における石炭火力発電所新増設問題及びこれに対して市民が提起している気候変動訴訟の現状と課題について議論を行った。その成果を踏まえ、私たちは以下に宣言する。

1.国内外において石炭火力発電所の新増設をやめ、再生可能エネルギーへと転換することを求める

日本は、2050年までに温室効果ガスを8割削減することを目標としている。また、極めて不十分な目標ではあるが2030年までに温室効果ガスを2013年比で26%削減することを目標としている。しかし、既存の、及び、建設計画中の石炭火力発電所の設備容量は、これらの目標に対して過大である。

2050年目標を前提とすると天然ガスによる火力発電も漸次縮小してゆかなければならないが、天然ガス火力と比較して2倍以上のCO2を排出する石炭火力発電を、この期に及んで新増設することは絶対に許されない。それに加えて、石炭火力発電は、天然ガス火力発電と比べて、SOx、NOx、ばいじん、SPM、PM2.5、水銀などといった大気汚染物質を多く排出するものであり、地域の大気環境の保全という観点からも、最悪の燃料である。

にもかかわらず、COP25開催に合わせ、2019年12月3日、梶山経済産業大臣は「石炭火力発電など化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい」と述べ、石炭火力発電所を続ける考えを示した。今そこにある危機を前にしてこの周回遅れの発言は全く許されるものではない。

世界的に見ても、特に石炭火力発電からの脱却、石炭火力関連の事業からの投資の引き上げ(ダイベストメント)の動きが加速している。また、世界各地で、気候変動対策を求める訴訟、石炭火力発電所の操業の差止めを求める訴訟が提起されている。

しかしながら、日本においては、仙台港の石炭火力発電所を初め次々と石炭火力発電所を新設・稼働させており、さらに、神戸、横須賀の計画を含め、30数基の石炭火力発電所の建設計画がある。政府及び電力会社は、温暖化対策、地域環境の保全、水銀排出の削減をすすめるため、石炭火力発電からのすみやかな脱却をすすめるべきである。

被告国及び電力会社は、石炭火力発電に対する市民のこのような問題提起を真摯に受け止めなければならない。そして、裁判所は、この訴訟を通じ、石炭火力発電所の新増設や既設発電所の稼働を中止させ、将来世代のために、再生可能エネルギーを中心としたエネルギーシステムの速やかな構築を促すような判断をすべきである。

2.私たちの決意

再生可能エネルギーを中心に、市民や自治体が、自らの手でエネルギーの利用のあり方を革新する動きが拡がってきた。私たちは、将来世代や国際社会に対して責任を果たそうとする人々とともに、大気汚染リスク、気候変動問題の解決に向け、石炭火力発電から脱却し、持続可能な社会を実現するため、次のことを実行する。

・石炭火力発電所の新増設・稼働の差止訴訟など、脱石炭火力発電のための運動を展開し、あるいは、それらを支援する。

・私たちは、エネルギーの消費者として、石炭などの化石燃料や原子力への依存度が高い電力会社ではなく、再生可能エネルギーの割合の高い電力会社を選択する。

・政府や電力会社などに対して働きかけるだけでなく、自らが再生可能エネルギー事業を行ったり、省エネルギーに取り組んだりする等、自らの手で、持続可能なエネルギーシステムを実現する努力を続ける。

2019年12月8日(日)
神戸石炭訴訟提訴1周年記念シンポジウム参加者一同