【横須賀】2018年7月27日 横須賀石炭火力発電所建設計画についての神奈川県知事への申し入れ

7月27日、横須賀火力発電所建設問題を考える会は、神奈川県知事に対して横須賀石炭火力発電所建設計画についての申し入れを行いました。環境アセスメント準備書に対する神奈川県知事意見は8月上旬にも公表されるとのことです。少しでも知事意見に反映していただくよう申し入れしています。具体的な内容は以下のとおりです。

申し入れ事項

一、準備書についての事業者による説明会には2会場とも会場あふれる参加者があり、住
民の関心の高さが示されました。また、久里浜会場では質問時間を1時間30分も大幅に
延長しても、質問が中断される状況でした。ここで出された質問・意見の多くは私たちの
懸念と共通するものでありました。これらからも分かりますように、多くの住民は到底納
得していると言えず、説明も不十分といわざるを得ないこと。

二、住民意見に対する事業者の見解も、石炭を燃料とした理由などについて国のエネルギ
ー基本計画に沿っていることを繰り返すのみで、住民意見とかみ合った見解を示していな
い不十分な見解であること。

三、また、国のエネルギー基本計画を前提にしても、既設の石炭火力からのCO2排出量
が2030年の日本の約束草案をすでに超過(武豊火力への環境大臣意見、及び環境省の
電力レビュー)しており、既設石炭火力の削減が求められている中で「経済性の観点のみ
で新増設は認められない」と表明している環境大臣の言明を踏まえた説明になっていない
こと。

四、県の地球温暖化対策計画との整合性については、アセス審査会でも知事への答申案に
記述するようにとの意見が出されています。事業者が6月22日のアセス審査会に提出し
た補足説明で数字をあげてCO2排出量の削減に繋がると主張しているが、この主張に従っ
て削減量を計算しても県の計画がめざした27%削減にはならず、全く整合していないこと。
また、事業者はベンチマーク指標やCO2排出係数の達成を主張しているがこれらの指
標が達成してもCO2削減目標が達成できないことは明白であるので、県の計画との整合
性については知事意見でも厳しく指摘すべであること。

五、本事業の対象事業区域の周辺は、旧施設が長期計画停止中にもかかわらず、現状にお
いても光化学オキシダントなど大気の汚染に係る環境基準の一部を達成していない地点が
存在するなど、大気環境の改善が必要な地域です。そのうえで、本事業は石炭という「最
悪の燃料」を用いてSOx、NOx、ばいじん、水銀その他の重金属の排出による環境負荷を増
大させる発電事業であり、周辺の学校、病院その他の環境の保全についての配慮が特に必
要な施設や多数の住居が存在していることへの配慮が不十分です。このような地域に大規
模汚染源を追加することは、到底認められません。この点にかかる指摘が極めて不十分で
す。汚染物質の排出は環境基準をクリアしても必ずリスクが伴います。本事業により増大
するリスク評価を求めること。
また、自動車排ガス対策等により長年の努力で積み上げてきた公害対策の成果を、否定
することにもなります。知事意見ではこの点への言及を強めること。

六、東京湾周辺には火力発電所が集中し、その上、五井、姉ヶ崎、川崎などLNG火力発
電所の増設計画とともに3ヶ所の石炭火力発電所の建設計画があります。しかし、現行制
度の環境影響評価制度では個々の評価のみで全体としての評価をする仕組みがありません。
大気汚染物質や温排水などによる環境への影響は広範囲に及ぶものであり、とくに東京湾
という閉鎖水域への温排水の影響は計り知れないものがあります。国の制度に関わるもの
とはいえ持続可能な社会の形成にとって欠かせない課題と思われますので、知事意見にし
っかりと盛り込むこと。

七、現在、東京湾周辺で石炭火力発電所は横浜市の磯子火力発電所だけですが、横須賀に
石炭火力が建設されると神奈川県に2ヶ所となり、パリ協定など脱石炭の世界の流れから
見ると、神奈川県はこの流れに逆行する環境後進県の汚名を被ることになりかねない。こ
うした点からも横須賀の石炭火力については県として事業者に中止を求めること。

八、騒音問題については、アセス審査会で専門家の方から、現状より騒音が大きくなる可
能性について指摘があった。答申案に取り入れられると思いますが、この問題は何回も指
摘があったにも関わらず事業者が改めなかった問題であり、知事意見ではこうした事業者
の姿勢についても厳しく指摘すること。

九、排ガス処理がBATの方針に反しています。そもそも燃料を石炭にすること自体問題
ですが、準備書で示された大気汚染物質の排出濃度は、現在運転している磯子石炭火力発
電所の実測値より高くなっています。このことは準備書に対する住民意見でも指摘されて
います。磯子石炭火力発電所のSOx処理は乾式で最も性能が高いと言われ、排出濃度の
実測値は準備書で示された排出濃度を遙かに下回っています。しかし事業者は湿式でも同
等の性能が得られるというだけで、この指摘を無視しています。事実に基づき説明するよ
う厳しく指摘すること。

十、第5次エネルギー基本計画に対する県の見解を示すこと。
第5次エネルギー基本計画は再生可能エネルギーの主力電源化を言いながら、相変わら
ず原発と石炭をベースロード電源にし、再生可能エネルギーについては他国の現状の水準
にも劣る低い割合(22~24%)に据え置くなど、現実から遊離し、混迷しています。
しかも、現行の系統運用ルールのもとで原発と石炭をベースロード電源とすることは、
再生可能エネルギーの送電網への接続が制約されることを意味し、化石燃料から再生可能
エネルギーへの明確な「転換の意思」が問われるものとなっています。
気候変動は今後も進行し、より広範な危険が増大・深刻化し、すべての人がその深刻な
影響・被害から逃れられなくなる時代にあって、脱炭素への本気の対応が求められていま
す。
今次計画の閣議決定をもって旧来型の政策を固定化させてはならず、パリ協定と整合す
るエネルギー基本計画への改定に向けて県の見解を示すこと。。
十一、神奈川県が温暖化対策、持続可能な社会形成で先進的役割を果たすこと。
県は、ソーラーシェアリング、屋根貸し事業、スマートエネルギーなど、積極的に再生
可能エネルギーの普及にとり組んでいますが、これらの施策を一段と強化すること。
「気候変動イニシアチブ」が立ち上げられました。県としても参加し、積極的な役割を
果たすこと。
さらに、COP24へ知事が自ら出向き、参加するとともに、脱石炭連盟に自治体とし
て加盟すること。
環境県として先進的役割を果たすこと。その第一歩として、横須賀の石炭火力発電所計
画の中止を求めることは上記の施策と一貫性があり、説得力のあるメッセージとなる。適
切な形で表明すること。

全文はこちらから。