【東京湾の会】国主催「九十九里沖CCS政策セミナー」 説明不足と対話欠如が浮き彫りに

経済産業省と千葉県は2025年12月21日、九十九里沖で計画されている二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業に関する「政策セミナー」を開催しました。国は本セミナーを、海底下での試掘調査について理解を得る場と位置づけていましたが、その内容や運営方法には多くの問題が残されました。

セミナーでは、経産省やJOGMECなどから、CCSがカーボンニュートラル実現のための「選択肢の一つ」であること、九十九里沖では本格事業ではなく調査段階の試掘を行う計画であることなどが説明されました。一方で、なぜ九十九里沖が選ばれたのか、将来的にどの規模の事業が想定されているのかといった、住民にとって重要な論点については具体性に欠けた説明にとどまりました。

挨拶をする経済産業省の担当課長(2025年12月21日)

特に問題だったのは、住民との対話の時間がほとんど確保されなかったことです。セミナーは16時で一方的に終了し、質疑応答の時間は極めて限定的でした。会場では多くの参加者が手を挙げていたにもかかわらず、十分に質問を受け付けないまま閉会となりました。

実際に行われた質疑では、パイプラインのルートや再昇圧設備の設置場所、地震や漏洩事故のリスク、環境影響評価が法的に不要とされている点、数千億円から数兆円とも言われる事業コストや長期的な監視負担など、住民から切実な懸念が相次ぎました。しかし、国側の回答は「今後検討する」「調査のための段階」「規制を整備中」といった抽象的な説明が多く、不安を払拭するには至りませんでした。

また、本事業の主体となる民間事業者「首都圏CCS」が説明の場に出席していなかったことや、録音・録画が禁止され、議事録の公表についても明確な説明がなかった点に対しても、参加者から強い批判が出ていました。これでは、住民が後から内容を確認したり、情報を共有したりすることは困難です。

CCSは、ひとたび実施されれば長期間にわたり影響が続く可能性のある不可逆的な事業です。にもかかわらず、今回のように「セミナー」という中途半端な形式で、説明は一方向、対話は最小限という進め方では、住民の理解や信頼を得ることは難しいと言わざるを得ません。

国と県には、事業ありきではなく、時間を十分に確保した説明会の開催、議事録や資料の公開、事業者自身による説明と責任ある回答など、住民参加を前提としたプロセスへの抜本的な見直しが求められます。

 

開催概要と資料(次第)

日時:2025年12月21日(日)14:00~16:00

場所:九十九里町立中央公民館 講堂

演題

(1)千葉県の地球温暖化対策の取り組み 千葉県商工労働部(資料

(2)CCS政策の動向について 資源エネルギー庁燃料環境適合利用推進課(資料

(3)苫小牧におけるCCUS大規模実証試験について 日本CCS調査株式会社(資料

(4)CO2貯留の仕組みと地層評価 JOGMEC エネルギー事業本部 CCS事業部 CCS技術課(資料

その他配布資料:CCS(資源エネルギー庁)

九十九里町立中央公民館にはシロクマのはく製が。気候危機を引き起こす人間に対して怒っているような表情で迎えられました