【横須賀】市長への申し入れ。「横須賀の石炭火力発電所建設計画の中止を求めること」

 2019年2月14日、横須賀市長に対して以下の申し入れを提出しました。

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横須賀市長への申し入れ

2019年2月14日

横須賀市長 上地 克明 様

東京湾周辺の石炭火力計画中止を受けた横須賀市への申入れ
「横須賀の石炭火力発電所建設計画の中止を求めること」

横須賀火力発電所建設を考える会
共同代表  榎本 広  鈴木 陸郎

 貴職におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
さて、㈱JERAによる(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画の環境影響評価書の縦覧が終わりました。私たちはパリ協定の目標達成、県や市の地球温暖化対策にかかわる問題や大気汚染物質による住民の健康被害の懸念があることなどから計画の中止を求めております。

これまでの環境影響評価段階における㈱JERAの住民への説明は、非常に不十分かつ住民が納得できる説明ではなかったため、評価書の段階においても、㈱JERAに対してあらためて説明会を開催するよう求めましたが受け入れていただけませんでした。

なお、事業者との懇談については、日時・場所の調整をおこなっております。

ご承知のことと思いますが、最近は日本における石炭火力の潮目が変わり、東京湾周辺でも、市原の計画が2017年に中止、千葉市蘇我の計画が昨年12月に中止、さらに袖ケ浦の計画が今年1月31日に中止となりました。私たちは市民団体・環境NGOとともに、環境リスク、気候リスク、評判リスク、経済的リスクなど総合的な評価の上での英断であったと歓迎の意を表しています。また、環境大臣も記者会見で高く評価すると述べています。その結果、東京湾周辺で残る石炭火力新設計画は横須賀だけとなりました。

石炭火力は多額を投じて建設しても将来運転できない可能性もあり、座礁資産になると言われています。しかし、㈱JERAは現時点では中止の判断のタイミングを逃し、評価書の縦覧が終わったことをもって着工にむけてすすむものと思われます。

今後、横須賀市と㈱JERAとの間で公害防止協定の改定もしくは新たに締結することが予定されていると思います。そこでその協議に入る前に石炭火力の新設計画の相次ぐ中止という大きな変化を受けて、貴職から㈱JERAに対して計画中止の英断を求めることを要請します。

補足説明

(1)性能が最良とは言えず、しかもCO2を発生する原理的「欠点」をもつ脱硫装置

㈱JERAの現計画では硫黄酸化物除去装置が湿式の石灰-石膏法による脱硫装置となっており、磯子石炭火力で採用されている乾式脱硫装置と比べ、除去性能が劣る点と、二酸化炭素を発生するという原理的な「欠点」が指摘されていた。(資料参照)
これに対して、㈱JERAは準備書に対する意見への見解で一方的に「湿式脱硫についても技術開発は進んでおり、乾式と比較しても、性能水準に大きな遜色はありません」「石灰-石膏法では脱硫プロセスにおいてCO2が約6万t/年(利用率85%)発生します」と述べているだけで、どんな脱硫装置がより環境負荷が軽減できるかを比較検討した説明がなされていない。㈱JERAが余分に発生することを認めた二酸化炭素の約6万t/年は一般家庭の2万世帯の排出量に相当し、一般家庭でこれだけの排出量を削減することは乾いた雑巾を絞るよりも困難である。
このように、専門家からの指摘に対してもまともな検討もしないで、温室効果ガスである二酸化炭素を余分に発生させる装置を押しつける㈱JERAの計画は到底受け入れることが出来ない。

このことからも建設計画は撤回を求めるべきである。

(2)石炭火力の容認姿勢を改め、建設計画の中止を求めること

東京湾周辺に計画されていた石炭火力発電所建設計画が矢継ぎ早に中止となっている。これはパリ協定成立後、石炭火力をめぐる状況が激変し、事業としての採算性の不確実性はもとより、脱石炭の国内外の流れがいっそう強まっていることの反映でもある。

パリ協定に基づく「1.5℃目標」の達成を目指すためには、石炭火力を新設することは到底認められない。このような状況の中で、本市に決定権はないが、容認している姿勢では環境問題、地球温暖化対策に背を向けているとの批判を免れることが出来ない。

いま世界では、先進諸国は脱石炭を表明している。今回の千葉の蘇我・袖ケ浦の石炭火力の相次ぐ中止発表は世界の流れに合致するものである。これからのエネルギー社会のあり方にとって良い方向に向かうものであり、横須賀の㈱JERAにも同様の英断を求めたい。

本市からこの方向に向かうことを㈱JERAに求めることは本市のイメージアップにもつながる計り知れない貢献となると思われる。そこでこの事態を契機に、先ず本市が石炭火力計画を容認してきた姿勢を再考し、改めるよう要請する。

その上に立って、静岡市長が清水天然ガス発電所計画は同市の国際海洋文化都市をめざしたまちづくりの方向性に合わないので見直す必要があると発言し、事業者はこれを受け入れ計画を断念した経緯などもあるので、本市としても、自治体として地球温暖化対策を真摯に追求する立場と環境重視の見地に立つとともに、三浦半島を「海洋都市」として発展させるという本市のまちづくりの方針に沿 って、㈱JERAに対し石炭火力建設計画の中止を求めることを強く要請する。

(3)公害防止協定の改定もしくは新たな協定締結にあたっての市民参加

㈱JERAが中止要請を受け入れず、建設することが前提になった場合には、公害防止協定の改定もしくは新たな協定を締結すると思われる。その場合には以下のことを要請する。

① (1)で指摘した脱硫装置の再検討を求めること。
② 公害防止については市民不在で締結するのではなく、事業者側からの提示内容に対して市民に意見を聞く場を設け、市民の意見を反映させること。このことは環境影響評価準備書などにおける環境大臣意見などでも、市民の意見を聞く場を設けるように要請があったが評価書などでも対応していないので必ず設定すること。
③ また、市の環境審議会の議題として審議すること。

資料<準備書に対する意見から>

① 除去性能:SOx濃度は磯子が10ppmに対し、横須賀の計画は14ppmとなっている。
② 脱硫装置:「石灰-石膏法による脱硫は20世紀に完成された成熟した技術ではありますが、当時は地球温暖化防止に必ずしも十分な配慮がなされていない時代で、脱硫プロセスにおいて、二酸化炭素が発生してしまうという、今の時代から見れば「欠点」ともいえる根本的な問題が存在します。原理上、「二酸化炭素発生装置」とも呼べるものです。」(この指摘をした専門家の方は、県や本市にも直接提出したと言明している)