【横須賀】株式会社JERA「横須賀火力発電所新1・2号機建設計画環境影響評価書」に対する同評価書の変更を要しない旨の通知(確定通知)したことについて抗議及び撤回の要求

2018年11月30日、「横須賀火力発電所新1・2号機建設計画環境影響評価書」に対して経済産業省が「確定通知」を出しました。これを受け、石炭火力を考える東京湾の会と横須賀火力発電所建設を考える会では、経済産業大臣に対して以下の抗議及び撤回の要求を提出しました。評価書は12月18日からが公開され、2019年1月25日まで縦覧期間となっています。*なおこのJERAの環境影響評価図書については、インターネットエクスプロラーのブラウザーでしか見ることができないようなのでご注意ください。

参考)経済産業省「(仮称)横須賀火力発電所新1・2号機建設計画 株式会社JERA」の環境影響評価手続きに関する情報


2018年12月28日

経済産業大臣 世耕弘成 様

株式会社JERA「横須賀火力発電所新1・2号機建設計画環境影響評価書」に対する同評価書の変更を要しない旨の通知(確定通知)したことについて抗議及び撤回の要求

石炭火力を考える東京湾の会
横須賀火力発電所建設を考える会

 株式会社JERAは、貴職による11月30日付けで電気事業法(昭和39年法律第170号)第46条の17第2項の規定に基づき、「横須賀火力発電所新1・2号機建設計画環境影響評価書(以下評価書)」に対する同評価書の変更を要しない旨の通知(確定通知)を受け、評価書の縦覧を12月18日より開始しました。

これまで株式会社JERAが作成した「横須賀火力発電所新1・2号機建設計画環境影響評価準備書(以下準備書)」に対し、CO2排出量の増加や大気汚染物質等の排出等、多数の環境保全上の問題があることを指摘してきました。また、この間、今年10月にIPCCがまとめた「1.5℃特別報告書」でも示されたように、世界の気温上昇を1.5℃に抑えるためには、いかなる石炭火力発電所の新規建設も認められるものではないことが明らかであり、世界的な脱石炭の流れが加速する中において、それに逆行するような極めて問題な事業であることを指摘せざるを得ません。

また、準備書に対しての住民からの指摘としては、(1)なぜ「石炭」を選んだのかの説明が非常に不十分であること、(2)リプレース案件だとして、既存の設備をフル稼働した状態を「現状」として比較をし、新規建設で環境影響が低減するかのように見せかけていること(「現状」では全く稼働していない大気汚染がない状態なので、環境影響が低減するというのは事実ではない)、(3)地域住民への説明が不十分であり、多くの周辺住民がいまなお計画について知らず、説明責任を果たせていないことがあげられます。

今回、公開された評価書の内容は、これらの問題点、疑問を解消する内容になっておらず、全く容認できるものではありません。また、貴職の勧告並びに環境大臣、神奈川県知事等の意見書(CO2の削減措置、住民への説明・信頼回復措置等)を十分に反映させた内容となっていません。

地域住民に対して十分な説明もなく、もちろん理解もないなかで、貴職がこの度、電気事業法の規定に基づいて株式会社JERAに対し、確定通知を送付したことに対して抗議するとともに即座に本通知を撤回するよう要求します。評価書及びこれに対する貴職の確定通知には、上記にあげた問題のほか、別添「評価書及び確定通知の問題点」に掲げた問題点があり、電気事業法に基づく工事計画認可の申請が事業者からなされたとしても、これに対して認可を行うことは断じて容認できません。

以上

評価書及び確定通知の問題点

1.合理化ガイドラインへの適応の根拠が不明

事業者は、合理化ガイドラインの適用について、既設は「環境影響評価手続きを開始した時点では、長期計画停止中であり、必要に応じて再稼働が可能であること、」(評価書P481)としているが、再稼働可能な状態であったとする証明ができていない。既設には脱硫装置が一つもついておらず、老朽化と相まって、とても運転を再開できるような状況であったとは考えにくい。

下記の表から、H22年に3~8号機が長期計画停止に入り全号機が長期計画停止となったとされていたことはわかるが、H23年の東日本大震災では電力が逼迫するといわれる中で、3-4号機のみ稼働し、移動式のガスタービン発電機などを持ち込んでまで発電しながら、5~8号機を稼働していない。このことは、5~8号機は「必要に応じて再稼働が可能」な状態ではなかったことを証明しているのではないか。

 

2.数値の信憑性に欠ける評価書 ~硫黄酸化物の排出量の間違い~

以下に示す評価書P486のリプレース前後の比較の表で、硫黄酸化物の排出量(年間値)が約617t/年とあるが、これは1時間値が58㎥N/hなので計算上はこの倍になるはずである(下記計算式参照)。「既設」から大きく環境負荷が軽減しているように見せかけたかったのか、単なる計算間違いなのか不明だが、これを経済産業省が検証もせずに確定通知を出していることが非常に問題である。また、このことから、他の数字に対しても信憑性が問われる検証であったと指摘せざるをえない。

(新設稼働時の硫黄酸化物の排出量に関する計算式)

1時間値  58㎥N/h
年間値   58×24時間×365日×0.85=431,868㎥N (稼働率85%とする)

したがって 硫黄酸化物の年間排出重量は
431,868×(64÷22.4)÷1,000=1,234t/年
(硫黄酸化物をSO2として計算)

 

【問い合わせ先】石炭火力を考える東京湾の会  TEL:03-3263-9210
横須賀火力発電所建設を考える会   TEL:046-847-3253

 

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